白い着物のおじいちゃん
明るい空間だった。
祖母の家の、あの玄関ホール。
目の前に二部屋が横並び。
左が台所、右が茶の間。
どちらもガラス格子の引き戸で、向こう側がよく見える。
私はそこから、その光景を見ていた。
立っているというより、玄関側の視点から見ているだけ、という感じだったかもしれない。
白い装い
茶の間に、白い着物の男性がいた。
襟に光沢があり、帯もつやのある素材。
刺繍のような立体感があって、少し金が入っている。
派手ではない。けれど、品があって、どこか静かな存在感があった。
死装束の白ではない。
むしろ、お坊さんが袈裟を着る前のような、
これから何かに入る直前の装い。
その人は、台所のほうを向いて帯を締めていた。
きっと台所には、おばちゃんがいる。
ただ、見ている側
怖さはなかった。
暗くもない。
重くもない。
ただ明るく、静かだった。
私はその場面の当事者ではなく、見ている側だった。
声をかけるでもなく、呼ばれるでもなく、ただ視界に入っていた。
血の感覚
会ったことはないけれど、
「おじいちゃんじゃないかな」と思った。
確信ではない。
でも自然にそう感じた。
祖母の家。
父方の血。
白に少し金。
帯を締める、動き。
繋がっているんだろうな、と思った。
第二章の入り口
ちょうど私は、第二章に入ったところだった。
レッスンをやめ、
これといって大きな夢も掲げず、
それでも日常は穏やかだった。
1月の誕生日の朝、訃報が届いた。
生きることは当たり前じゃないし、
それは突然くるかもしれないということ。
そんな流れの中で、
私は肩書きを置き換え、サイトを書き換え、
「書く」ことを選び直した。
帯を締める
帯を締める姿。
終わりではなく、準備。
喪ではなく、切り替わり。
あの白は、空白ではなく、始まりの白だったのかもしれない。
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自分にコードをつなげよう
My rhythm, my light
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