このコラムは「9 SENSE MAGAZINE 10月号」にも掲載しています。
9 SENSE MAGAZINEでは、9 SENSE CORDのことだけではなく、暮らしの中で気になったこと、心が動いたこと、私自身の経験から生まれたことも読み物として届けています。
「きょうだい児」という言葉を知っていますか?
私は、障害のある兄と一緒に育ちました。
「きょうだい児」という言葉を知ったのは、ずっと後、大人になってからです。
「きょうだい児」は、障害や病気のある兄弟姉妹をもつ人を表す言葉として使われています。私自身、この言葉を知るまで、自分の立場に名前があるなんて考えたこともありませんでした。
私にとっては、それが普通の家だった
兄に障害があることは、私が生まれたときからそこにあったことです。
子どもの頃の私にとっては、「うちの家はこういう家」というだけでした。家族の予定が兄を中心に動くことも、親戚の家へ行けば「お兄ちゃん元気?」「お兄ちゃんどうしてる?」「お兄ちゃん頑張ってるね」と、まず兄の話になることも、両親の知り合いに会えば同じように兄の話になることも、ずっと日常の中にありました。
当時の私は、そこに疑問を持つことさえあまりなかったと思います。
今振り返ると、家の中で私はいつも主役ではなかったような感覚があります。
「私のことも見てほしい」
そんな気持ちも、どこかにあったのかもしれません。当時は、その感情に名前をつけることもできませんでした。
大人になってから見えた 子どもの頃の自分
成長して家の外でいろいろな人と出会い、いろいろな家庭を知りました。自分自身も大人になりました。
そうすると、子どもの頃の自分を、当時とは違う場所から見られるようになります。
あの頃は「当たり前」だと思っていたことを、
「あれは私にとって、どんなことだったんだろう」
と考えるようになりました。
そこから、自分の中にずっと残っていた感情にも気づくようになりました。不満だったり、不安だったり、寂しさだったり。
ときには、
「兄に障害がなかったら、私の人生は違っていたのかな」
と考えることもありました。
そんなことを考える自分が嫌だった
この気持ちは、なかなか人には言いづらいものでした。
兄を大切に思う気持ちはある。それと同時に、自分の人生について考えたとき、「もし違う家庭環境だったら」と想像する自分もいました。
そして私は、そんなことを考えてしまう自分に罪悪感を持っていました。
「こんなことを思うなんて、私は嫌な人間なんじゃないか」
「妹なのに、こんなふうに思ってはいけないんじゃないか」
そんなふうに、自分の感情そのものまで責めていたことがあります。
兄のことを大切に思う気持ちと、自分の人生について感じること。今なら、この二つは同時にあってもいいのだと思えます。
当時の私は、まだそれをうまく分けて考えることができませんでした。
同じ立場の人は 何を感じているんだろう
あるとき、障害のある兄弟姉妹をもつ人たちは、どんなことを考えているんだろうと思って調べました。
同じようなことを感じた人はいないんだろうか。
そこで出会ったのが、「きょうだい児」という言葉でした。
その言葉を使ったサイトや情報を読んで、少し安心したのを覚えています。
「あ、私だけじゃなかったんだ」
こういう立場に名前があって、同じような環境で育った人がいる。言葉にしづらい感情を抱えてきた人もいる。
そのことを知っただけで、自分が感じてきたものの見え方が少し変わりました。
自分の感じていたことに名前がついたことで、
「これは私だけが抱えていたものではないのかもしれない」
と思えた。
それは、私にとって大きなことでした。
名前があることで 少し安心できることがある
人をカテゴリーに分ける言葉には、窮屈さを感じることもあります。一方で、「自分だけではなかった」と知る入口になる言葉もあります。
私にとって「きょうだい児」は、そういう言葉でした。
自分がずっと「普通」だと思っていた環境。その中で抱えてきた感情。人には言いづらかったこと。
「きょうだい児」という言葉を知ったことで、それらを改めて考えることができました。
もし 同じような気持ちを抱えている人がいたら
この文章を書こうと思ったのは、「きょうだい児」という言葉を知らない人が、まだたくさんいると思うからです。
以前の私のように、
「こんなことを思うのは自分だけなんじゃないか」
「こんなふうに感じる私は冷たいんじゃないか」
と、自分を責めている人もいるかもしれません。
私は、この言葉を知ったとき、
「私だけじゃなかったんだ」
と少し安心しました。
今度は私の発信が、誰かにとってこの言葉を知るきっかけになればいいと思っています。
「きょうだい児」という言葉があること。同じような立場で生きてきた人がいること。
それを知るだけで、自分がこれまで感じてきたことの見え方が少し変わることもあると思うからです。
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自分にコードをつなげよう
My rhythm, my light
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